オーサワの玄米クリームと玄米もち
特集
心とカラダに
よりそう玄米
玄米とは、お米から籾殻だけを取り除いたもの。さらに胚芽や糠まで取り除くと、精白米になります。この胚芽、糠には、ビタミンB 群やミネラル食物繊維、たんぱく質が多く含まれることから、玄米の栄養は精白米を大きく上回ります。マクロビオティックの観点からは、中庸の食材であること、日本人の体質に合っていることなどから、毎食でも取り入れたい基本の食材です。
コツをつかめばモチモチの炊き上がりになり、噛むほどに増す白米とはまた違った味わいがあり、何よりおいしいのです。それに、こんなにバランスのいい栄養が詰まった玄米を食べないのはもったいない! 今号では、手軽に食卓に取り入れられる玄米の加工食品をご紹介します。
文/柳澤智子
撮影/坂井竜治
つくり手の現場から
ー オーサワの有機絹ごし玄米クリームと有機玄米もち
さらにおいしく、手軽に
健康につながる玄米食品を
栄養の詰まった玄米。玄米ごはんを炊いておかずとともにいただくのもよいですが、ひと手間かけた様々な食べ方があります。マクロビオティックの食養生における代表的なレシピである、玄米のお粥を裏ごしした「玄米クリーム」もそのひとつ。すべり落ちていくようなとろりとした喉ごしで食べやすく、元気が出ないときにも身体に優しく、満足感もあります。
「玄米もち」も、玄米ごはんと比べて調理が手軽で消化も早く、おかずやおやつとしてアレンジしやすいことから、デイリーに取り入れてほしい食材です。
しかし、玄米クリームも餅も、いざ自分でつくるとなると大変な手がかかるもの。オーサワジャパンでは、玄米の加工食品を得意とする名古屋の「コジマフーズ」に、マクロビオティックの考えに基づいたオリジナルの玄米商品の製造を長年にわたりお願いしています。
コジマフーズは、昭和23年の創業。小島正士さんが3代目の代表を務めます。
お祖父さまが始めた当時は米、雑穀、飼料の販売と、製粉、製麺の加工販売をしていたそう。昭和54年、2代目であるお父様が玄米の加工食品の開発をスタート。以来、餅、粥、ごはん、発芽玄米など種類を増やしています
「体調を崩していた父が玄米食を続け回復したことが大きなきっかけとなりました。その頃、父は石塚左玄の食養生に詳しい内科医の先生とご縁があり、その先生から『玄米の商品をつくってみなさい』と背中を押していただいたと聞きます。当時は、玄米食は今ほど認知されておらず情報もありません。もともと米屋なので餅をつくる設備を持っていたことから、まず最初につくり始めたのが玄米餅でした。
その後、私の姉が東京で開講されていたオーサワジャパンの料理教室に通うようになります。
そこで玄米ごはんのおいしい炊き方や、玄米クリームのつくり方などを学ぶと同時に、家庭でそれらをつくることの大変さを知りました。玄米を加工した製品ができれば、手間をかけずもっと手軽に玄米を楽しめるようになるはずだと父が思い立ち、開発が始まりました」と振り返る小島さん。
家族そろってのひたむきな取り組みによって始まった、玄米の加工食品づくり。「おいしくて安全で、健康につながるものをつくらねば」というお父様の熱い信念を受け継ぎ、今に至っています。
滋養のクリーム
玄米の力を引き出して凝縮した、
たくさんある商品のなかから、約35年前からつくっている「玄米クリーム」の製造の様子を見せていただきました。材料は、国産の有機栽培玄米と水、ほんの少しの自然海塩のみ。目を引いたのは、米に籾もみ殻がらがまだ付いた状態で倉庫に保管されていたこと。
それは、籾もみ摺ずりしたての非常に新鮮な状態の玄米を使うため。使う直前に、使う分だけを「籾摺り機」にかけて、籾殻を取り除きます。マクロビオティックではその籾摺りしたての新鮮な玄米を「今ずり米」と呼んでいます。籾殻が付いたままの米を生産者さんから送ってもらうのは、中身の状態が確認できずどれだけ材料に使えるか分からないというデメリットもありますが、オーサワジャパンの「玄米クリーム」では新鮮な状態の「今ずり米」を使用しているのです。
籾摺りした後の玄米は、じっくりと焙煎します。マクロビオティックの観点から、玄米のもつ力を引き出しより風味よく仕上げるためです。そしてたっぷりの浄水とともに、お粥として炊いていきます。
「手間はかかりますが、オーサワジャパンならではの〝おいしさ〟と品質にするための、大事な要素なんです」
工程はまだまだ続きます。ずらりと30個以上並んだ家庭用の圧力鍋。
なかでは、とろとろの水分多めのお粥が。「この場所はうちの工場の心臓部ですね。大きな釜ではなく家庭用の圧力鍋で直火で炊くことで、お米の芯からしっかり火が通って、ふわっともちっと美味しく炊き上がり 工程はまだまだ続きます。ずらりと30個以上並んだ家庭用の圧力鍋。なかでは、とろとろの水分多めのお粥が。
「この場所はうちの工場の心臓部ですね。大きな釜ではなく家庭用の圧力鍋で直火で炊くことで、お米の芯からしっかり火が通って、ふわっともちっと美味しく炊き上がります。
玄米クリームは、お粥を炊いて、それをこし器で丁寧に裏ごしし、さらに、こしたものをもう一度鍋に戻して火にかけ、手作業でかき混ぜながら、よりなめらかに仕上げていきます。お粥の粒がほんの少しでも残っていると、喉にひっかかりを感じてしまう。絹ごしのようななめらかなクリーム状にすることで、調子の悪いときでもいただきやすく、身体に吸収されやすくなるんです」
新鮮な“今ずり米”を炊いて、手間をおしまずクリームにしていく
ここまで手がかかるものを商品としてつくり続けるのは、必要とする人がいるため。
「以前、病で水すら飲めなくなった方のご家族が、『この玄米クリームなら飲めた。最後に食事の喜びを感じて他界できた』とお礼を言いにオーサワジャパンまでいらしたと聞いたんです。つくり手冥利に尽きることですし、これは続けていかなくては、と」
ただ栄養を摂るだけでなく、口と喉を使って味わい、食べることの喜びを感じられる玄米クリームは、最後までやさしく身体に寄り添い続ける食べものなのです。
甘み感じる玄米餅
コシが出るまでしっかり杵づき
続いて見せていただいたのは、玄米の加工食品として、最初につくったという「玄米もち」の製造現場。
約45年続くロングセラーです。材料は、国産有機栽培もち玄米。
「このもち玄米にしっかりと水を含ませ、十分に蒸して、粗づきをした後、さらにコシが出るまで杵でつく。この昔ながらのシンプルなつくり方が一番おいしいと思います」
焼いて食べると玄米が持つコクと香ばしさがあり、コシのあるほどよい食感と歯切れのよさ、ほのかな甘みも感じます。普段は玄米ごはんを食べないけれど玄米もちは好き、と長く購入される方も多いとか。確かに、普通の餅とも玄米ごはんとも違う、食べやすさを感じます。
バリエーションもいろいろあります。特に「オーサワの有機よもぎ入り玄米もち」は、緑を通り越して黒に近いほど!「よもぎが多少混ざっている程度ですと、味も風味も少ないので、たっぷり入れています」と話す小島さん。
コジマフーズでは添加物を使わず、素材そのものの味わいを引き出すことをこころがけています。だからこそ、原材料の調達は重要なこと。各地の生産者さんとの関係をとても大切にされています。「大事なのはやはり、農家さんとの人と人のつながり。毎年会いに行っています」
これからも
「おいしい玄米」の追求を
「先代がよく『身体にいいから我慢して食べるのでは続かない。自分が食べておいしいと思うものをつくらなくては』と口にしていました。この思いを受け継ぎ、日々玄米商品を製造しております」と語る小島さん。
「玄米を食べやすく、そしておいしくつくり上げるために工夫を凝らしているのですが、ひと手間をかけるだけで旨みと甘みが引き出され、風味も食感も格段に変わります」
何十年と玄米と向き合ってきたからこその言葉。ふっくらもっちりとした玄米ごはんの炊き上がり、発芽玄米の食味を活かした加工方法、発芽玄米おにぎりのほどよい食感など、それぞれの商品の工程に細やかな工夫があります。さらに、食べたら身体が喜ぶような満足感も。どんな人のどんな日常にも寄り添う「おいしい玄米」の追求は、これからも続いていくでしょう。
「白米が主流の現代において、玄米は特殊な食材。だからこそ存在意義があると思うのです。玄米を求める方々との固いつながりを感じながら、感謝の気持ちをもってつくり続けて参ります」
玄米について、もっと知ろう!
収穫後のお米の籾殻を除いたものが玄米
穂を見ると分かるように、お米は一粒一粒が「籾殻」に覆われています。その籾殻を除いたものが、玄米です。精米を経て「糠層」と「胚芽」を取り除いた白米は食べやすいものですが、お米本来の栄養の多くは糠層と胚芽に詰まっています。玄米は、水に浸すと芽が出て成長する。発芽に必要な栄養が揃っている状態なのです。
マクロビオティックでは基本のひとつ「一物全体」の考えのもと、お米を丸ごといただける玄米食を推奨しています。
いきなり玄米にするのに抵抗がある場合は、白米と玄米の中間のお米を選んでみるのもよいでしょう。発芽を促した「発芽玄米」、白米の精米率を10として、胚芽と糠層を割合に応じて削った「分搗き米」、玄米の糠層を削りとり胚芽を残した「胚芽米」など、いずれも食べ応えが異なり、味わいも様々。ご自分の好みに合わせて試してみるのもおすすめです。
オーサワの有機玄米クリーム・有機玄米もちができるまで
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小島正士さん
株式会社 コジマフーズ
認知度、ニーズが少ない昭和50年代から玄米加工食品をつくり始めたパイオニア「コジマフーズ」、3代目代表となる小島正士さん。安心、安全、美味しいをモットーに商品開発から生産を切り盛りしています。
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